男性不妊に行われる手術って?無精子症にも有効な治療法って?
精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)に対する手術
男性不妊の治療方法として、手術が行われる場合があります。手術療法の種類は主に3つ。これらをご紹介します。
1つ目は精索静脈瘤。これは静脈を通って精巣から心臓へ戻るべき血液が逆流してしまい、精巣の静脈内に古い血液が停滞してしまうもの。血流が停滞してコブのようになり、血液が増えるために精巣の温度が上がります。精巣の温度上昇は、精子を作る機能に障害を与えます。精索静脈瘤は静脈の特殊な走行の関係で約90%が左側に生じ、軽いものを含めると全成人男性の約15%、男性不妊患者の約40%に見られると言われています。手術の方法は病院によって異なりますが、一般的には下腹部を2.5~4cmほど切開し、停滞している精巣静脈を縛ります。これによって静脈血は他の静脈を通るようになるため、血流停滞が解消されます。この手術の結果約50~60%の患者に精液所見の改善が見られ、約35%が妊娠に至っています。
閉塞性無精子症に対する手術
2番目は閉塞性無精子症です。これは精巣内で精子が作られているにも関わらず、精液内に精子が出てこないというもの。精子の通り道が何らかの原因で詰まっている(閉塞している)ために起こります。閉塞箇所は主に①精管②精巣上体③射精管の3か所で、それぞれに閉塞原因は異なります。
①精管閉塞
精巣で作られた精子が送られる通り道が閉塞している。パイプカットや幼少時の鼠径ヘルニアなど手術後の炎症、先天性精管形成不全などが原因とされる。
②精巣上体閉塞
精巣上部が閉塞している。精巣上体炎など炎症後の傷跡やYoung症候群(気管支炎や副鼻腔炎と同時に閉塞が起こる病気で原因不明)などが原因とされる。
③射精管閉塞
尿道につながる射精管が閉塞している。射精管付近にできた嚢胞(のうほう。液体の塊)のために射精管が圧迫されているケースや、尿道感染による炎症が治癒していく段階で射精管が癒着してしまうケースなどがある。
手術は閉塞した管の開通を目的とし、精管同士または精管と精巣上体を繋ぐというものや、射精管の閉塞箇所を切開し詰まっている箇所を開通させるというものになります。
無精子症に対する手術
3番目は無精子症です。これは精液中に精子がまったく存在しないというもの。精巣で作られた精子が精液中に出られない状態を②の「閉塞性無精子症」と呼び、精子の通り道に問題はないものの精巣が精子を作る機能が極度に低下している(もしくはまったく作られない)症状が非閉塞性無精子症(一般的に「無精子症」)と呼んでいます。先天性のほか、抗がん剤治療やおたふくかぜのウィルスによるものといった後天性がありますが、原因不明の場合も多いです。精巣の精子造成機能が低下しているのであれば、数は少ないながらも精巣内に精子は存在しているため、手術用顕微鏡で拡大しながら精巣内にある精細管という組織を採取する「顕微鏡下精巣内精子回収法(MD-TESE:マイクロテセ)」という方法が取られます。この方法で精子が回収できるケースは約30~40%となっています。また精子が作られていない場合、病院によっては精子になる前段階である「円形精子細胞」を卵管に注入する「円形精子細胞卵子内注入(ROSI:ロシ)」という手法をとることも可能です。